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仮想通貨取引プラットフォームBakkt(バックト)とは?

インターコンチネンタル取引所(ICE)の傘下にある仮想通貨取引のプラットフォーム「Bakkt(バックト)」が、2019年9月23日に『現物引き渡し型ビットコイン先物』を開始することを発表しました。Bakktは2ヶ月前の7月23日にビットコイン先物のユーザー受け入れテストを行い、また8月17日には、ビットコイン先物契約が米商品先物取引委員会(CFTC)ニューヨーク州金融サービス局(NYFDS)から承認されたことを発表しています。

すでにシカゴマーカンタイル取引所(CME)シカゴ・オプション取引所(CBOE)がビットコインの先物を開始しています。なぜBakktの参入はそれ以上に注目されているのでしょうか?具体的に見ていきます。

親会社のインターコンチネンタル取引所(ICE)とは?

インターコンチネンタル取引所(ICE)

ICEとは、Intercontinental Exchangeの略で、2000年に設立した米ジョージア州アトランタに本部を置く、デリバティブ取引中心の電子取引所、取引所の運営会社です。農作物や金融、エネルギー、金属、株価指数、外国為替、金利、CDSなど、幅広い商品を取り扱っています。アトランタの本部以外にニューヨーク、シカゴ、ヒューストン、ワシントンDCの4箇所に事務所があります。また、アメリカ以外にもイギリス、オランダ、カナダ、そしてシンガポールにもオフィスがあります。2013年に共同株式会社である、NYSEユーロネクストを買収して世界最大証券取引所である「ニューヨーク証券取引所(NYSE)」の親会社となりました。

ICEのCEO Jeffrey C. Sprecher(ジェフリー・スプレッチャー)

Jeffrey C. Sprecher(ジェフリー・スプレッチャー)CEO氏 

ICE のCEOのJeffrey C. Sprecher氏は、2018年8月のBakktの立ち上げの際、「規制されたインフラクチャとデジタル資産のための消費者用のアプリケーションを融合させ、まだ規制されていない仮想通貨市場に透明性信頼性をもたらし、資産階級層が信頼をもって仮想通貨に投資する環境を築くことを目的としている」と述べ、2019年の第2四半期(4月~6月)では、「世界中のニーズに応える規制されたエコシステムの開発に取り組んでいる」と、ビットコイン先物の公開の可能性の高さを強調していました。

「Bakkt(バックト)」はデジタル資産に透明性と信頼性をもたらすエコシステム

Bakktその2

Bakktのホームページには以下のように記載されています。

“Bakktはデジタル資産をサポートすることを目的としてデザインされました。デジタル資産を安全に保管取引する中で、Bakktの規制されたエコシステムは、組織と小売商店、そして消費者を支えるために安全な技術を基盤としてシステム化されています”

また、CEOのKelly Loeffler(ケリー・ロフラー)氏も次のように述べています。

Kelly Loeffler氏
Kelly Loeffler(ケリー・ロフラー)氏

「Bakktは、安全性効率性、そして実用性を促進することで、小売商店消費者が仮想通貨市場に参入しやすい入り口として機能するように設計されています。世界的規模の市場や取引において、デジタル資産が潜在的にもつ可能性を解放する、オープンなプラットフォームを構築するために提携を結んでいます。」

噛み砕くと、Bakktは、ビットコインなどの仮想通貨を米ドルに変えて、クレジットのように実際の店舗で利用できることができるサービスであり、このようなインフラが広がれば、ビットコインの実用性が高くなるとされているのです。

このように、Bakktは、不安定な仮想通貨の制度を整えて、透明性信頼性のあるエコシステムを目指していますが、その中でも力をいれているのが、機関投資家が参入しやすいプラットフォームづくりです。

仮想通貨市場が抱える問題

  • 取引所間の価格剥離
  • 市場のボラッティリティ
  • 脆弱性のあるセキュリティ
  • 規制順守の曖昧さ
  • 現物市場で発生する価格操作

など、仮想通貨市場は上記のような問題があり、多くの機関投資家たちの参入の妨げになっています。

Bakktのソリューションを取り入れると……

  • CFTCやNYDFCに登録したことによる信頼性の向上
  • 現物引き渡し型の先物市場の展開
  • 保険付きカストディサービスの提供
  • 2つのウォレットの物理・電子的セキュリティによる安全な資産の保管

このようにBakktは、発表(2018年7月)からおよそ1年の経緯を得て、『現物引き渡し型ビットコイン先物』をスタートさせ、現在の仮想通貨の取引や管理システムを払拭し、トレーダーたちの仮想通貨市場参入促進を目指しています。

Bakktの『現物引き渡しビットコイン先物(Physically settled) 』

まず、「先物」について説明します。

先物とは?

先物取引とは「将来の売買に関して、現時点での取引価格で約束をする」契約のことです。将来的に高くなると予想した場合は、先物取引で買っておくと、約束の日に安く買えることができます。一方、将来的に安くなると予想した場合は、先物取引で売っておくと約束の日に高く売れます。

そしてビットコイン先物とは、「○月○日に1BTCを10000ドルで購入」といったことになります。売買する商品のことを「現物」と言います。この契約が満期すると、契約に基づいた代金と現物のやり取りが行われます。

この先物取引には、2種類のタイプがあります。

『現金決済型(Cash settled)』

現物を受け取る代わりに現金を受け取る方法です。

シカゴマーカンタイル取引所(CME)シカゴ・オプション取引所(COBE)が採用しているシステムです。CFTCより規制された世界初のビットコイン先物です。こちらは現物の受け渡しを行わずに、売りと買いの「差額」授受で決済する「差額決済取引」となっています。多くの先物契約は、『現金決済型』を採用しています。なぜならば、投資利益目的で金属先物を取引するトレーダーの多くは、額の大きい現金を受け取ることができない現物取引にあまり興味がないからです。それでは、なぜBakktは『現物引き渡しビットコイン先物(Physically settled) 』を採用したのでしょうか?

Bakktの『現物引き渡しビットコイン先物(Physically settled) 』

現物引き渡し型』は、ビットコインを買う側も売る側も、一定期日後に、契約に基づいて取引する分のビットコインを実際に受け取る、あるいは引き渡しをすることが必要になります。

機関投資家がBakktの『現物引き渡し型』に参入するとなると、ビットコインを購入するか、すでに保有していなければならない状況になっています。

現物引き渡し型』を採用した市場に機関投資家たちのお金が流れることで、価格操作の可能性も低くなり、ビットコインの価格が安定することが想定されます。そうなれば、仮想通貨市場が安定し、活性化するのではないかとされているのです。

現物引き渡し型ビットコイン先物

機関投資家が資産を仮想通貨市場に流通させると……

  • 仮想通貨の価格操作を最小限まで抑えることができる
  • ビットコインの安定した価格が形成される
  • 価格変動のリスクを抑えることができる商品が登場することでビットコインを取り扱いやすくなる

機関投資家だけではありません。小売店業者は、この価格変動に伴うリスクを抑えることができ、ビットコインを取り扱いやすくなるメリットが生じます。将来購入、あるいは売却するビットコインのドル価格を事前に固定し、価格変動リスクを最小限に抑えることができるようになります。つまり、差額決済でのやりとりがないので、価格が固定し、ビットコインの需要が多くなる可能性が高いということになります。

また米SECのビットコインETF承認に対する懸念が解消へと繋がるのではないかといった見方もあります。

Bakktのビットコイン先物は2種類

Bakktのビットコイン先物にはデイリー(日毎)マンスリー(月毎)の2種類があります。

  • デイリー… 満期1~70日でビットコインを取引できる契約です。マージン(証拠金)を元にした取引が可能であるとされています。
  • マンスリー…月毎に満期が設定された契約です。最長12ヶ月までのポジションを取ることができるようになっています。

Bakktと提携している企業

Bakktは、大企業のスターバックスマイクロソフトと提携を結び、ビットコインの使用範囲を広げています。現段階では、直接のビットコイン支払いはできませんが、ビットコインを米ドルに変換させることで、スターバックスでの利用が可能になっています。

その他にも出資している企業があります。

Fortress Investment Group, Eagle Seven, Galaxy Digital, Horizons Ventures, Alan Howard, Pantera Capital, Protocol Ventures, Susquehanna International Groupなど

まとめ

Bakktの画像3

Bakktの他にも、仮想通貨取引所のEtisX(エリスX)や仮想通貨のデリバティブ商品を開発するLedgerX(レッジャーX)、デジタル資産取引プラットフォームのSeed CXやtrueiDigitalなど、ビットコイン先物を開始する予定の企業がいくつかあります。 ビットコイン現物引き渡し先物が開始されれ、多くの機関投資家が参入し、ビットコインへの投資拡大が期待されます。そうなれば、仮想通貨市場全体が賑わうこと限りなしです。コア業務であるカストディアンサービスと共に、『現物引き渡し型ビットコイン先物』を打ち出したBakktの今後の動向から目が離せません。

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