
Facebookのリブラ2020年リリースへの懸念、欧州中央銀行(ECB)幹部が発言!
欧州中央銀行(ECB)の理事会メンバーであるイヴ・メルシュ氏は、2020年前半にリリースを予定しているフェイスブックの独自仮想通貨Libraに対し、金融政策設置への懸念について発言しました。9月2日フランクフルトで開催された欧州中央銀行制度(ESCB)において述べられたスピーチで明らかになっています。
フェイスブックのLibraが他の通貨と相違する3つの理由
9月2日にフランクフルトで開催された欧州中央銀行制度(ESCB)のカンファレンスにて、理事会メンバーであるイヴ・メルシュ氏はお金とプライベート通貨「Libraの影響」と題したスピーチを述べました。この中で同氏は、フェイスブックのLibraが法定通貨や他のプライベートコインと相違する点を指摘しています。
◆複雑かつ中央集権的管理体制
Libraの仕組みについて同氏は、複雑であるだけでなくほとんど中央集権的な体制によって構築されていると指摘しました。Libraはそもそもリブラ・アソシエーションと呼ばれる団体によってブロックチェーンの管理やデジタルマネーの収集が行われます。また決済に関する運営はフェイスブックの子会社にあたるCalibraが統括。Libraコインは、認証済み再販業者のネットワークを通じて独占的に配布されるため、集権化したマネージメント体制となります。このような構造上、分散化と仲介業務のボーダーラインを見分けるのは困難だと言及しました。
◆Libraは法定通貨には値しない
2つ目の焦点として、法定通貨の概念とLibraを比較した場合、明らかに正当性の違いがあると指摘しています。法定通貨は長年の国の歴史と法律に即した国家主権の表現であるのに対し、Libraは公共財に過ぎないと言い、また企業によって形成された独自ネットワークが、不正に収益化できる個人データへの特権的なアクセスは、法定通貨の概念に異すると懸念しています。
◆Libraのセキュリティ問題
同氏は、法定通貨との違いについて保護や保険、危機管理の観点からも不透明性を指摘しています。リブラ・アソシエーションで運営管理が集権化されるにも関わらず、Libra保有者の預金保護体制や責任管理については明らかにされていません。またLibraで行われる決済が現存する法定通貨へどの程度影響するかという点についても計り知れないと言及しました。
Libraが直面している法的課題3つ
イヴ・メルシュ氏は、2つ目に注目すべき焦点として規律に対するLibraの課題について詳しく言及しています。
◆Libraは電子マネーではない
同氏は現状では、Libraは電子マネーとして認証されないといいます。その理由はリブラが、リブラ・アソシエーションへ対する保有者の権限を明確にしていないからです。Libraが証券として金融商品扱いになる場合、コインを介した投資サービス金融商品市場指令の範囲内での運営が義務づけられます。仮想通貨として認証される場合は、Calibraと認証再販業者の両社ともに、指令のマネーロンダリング防止およびテロ対策資金調達義務、などの登録要件をすべて満たしている必要があります。現存する法的処置ではLibraは特異なカテゴリーになるため、法的な調整による取り決めが必須であろうとイヴ・メルシュ氏は言及しました。
◆Libraの規制管轄がEU下にすべてあるわけではない
Libraを総括するリブラ・アソシエーションの本部はスイスにありますが、LibraのエンティティはEU管轄外にも存在します。そのため関連するEUおよび加盟国の規制当局が、Libraおよびそのネットワークに対する管轄権を主張できるようにすることが重要です。1つのソリューションとしてはEU加盟国で取り扱うLibra保護基金を設立し、国家管理を要求する方法。さもなくば金融市場インフラストラクチャーの価値を左右するため依然として規制当局の判断にゆだねられるとして、検討と検索の余地がある重要な課題となります。
◆Libraコミュニティによる協力体制の有無
クロスボーダー決済を行うLibraは、グローバルな規制監督下において認証されなくてはなりません。一部のグローバル金融対策コミュニティにおいて徐々に協力的な動きが見られ始めています。G7では、支払いと市場インフラに関する委員会において、Libraを評価しています。また G20、金融安定委員会、および世界の金融および金融システムの安定性に関係するその他のフォーラムでは、さらなる進展が期待されています。
欧州中央銀行(ECB)のLibraによる金融改革への見解
同氏は、Libraの流通によって欧州中央銀行が関与するユーロの制御は低下させるほか、ユーロ圏の銀行のポジションに影響を及ぼし金融政策のメカニズムを損ないかねないと指摘しました。決済方法では最近Ecosystemが、TARGET Instant Payment Settlementサービス(TIPS)をスタートしたことにより、汎ヨーロッパの24時間365日決済を可能にしています。 TARGET2(Trans-European Automated Real-time Gross Settlement Express Transfer System)によって管理されたシステムで決済できるため、疑わしい市場ベースの小売決済イノベーションよりも安全で経済的な高性能決済ソリューションであると主張しました。
欧州中央銀行幹部イヴ・メルシュ氏「Libraは魅力的だが危険な約束」
欧州中央銀行理事会メンバーイヴ・メルシュ氏は、Libraが法定通貨と同じ価値を持つためには歴史と国家主権に裏付けられた信用がなければならないといいます。またLibra自体が信用に値する象徴であり、社会的機能を果たす効果が無ければ成り立たないと述べました。同氏は最後に「ヨーロッパの人々が、Facebookのサイレンコールという魅力的で危険な約束に賛同して、すでに確立された決済ソリューションとチャネルの安全性と健全性を見捨てないこと心から願っています。」と締めくくっています。