ブロックチェーンキャッチ画像その2

ブロックチェーン(Blockchain)とは?

今や仮想通貨だけでなく、dAppsゲームや、音楽やイラストのデジタルコンテンツなど多岐にわたる分野で、その斬新的な技術の活躍が期待されています。そもそもブロックチェーンとはどのような技術なのでしょうか?その誕生から、現状の活躍にまで迫ります!

ブロックチェーンが誕生したきっかけはビットコイン(BTC)

ブロックチェーンを考える前に、まずビットコインについてです。大まかに説明します。

ビットコインの誕生

仮想通貨の代表格であるビットコインは、2008年、サトシ・ナカモトと名乗る人物が「誰にも管理されず、改ざんのできない公平なシステムを取り入れた通貨を作りたい」という思いから、ビットコインのホワイトペーパーを発表しました。その後、論文を読んでその考えに共感した人たちがコードを作成します。そして2009年1月3日、有志あるプログラマーたちが最初のビットコインを開発します。

ブロックチェーン ビットコインの中核技術

ブロックチェーンは、ビットコインの開発をしている最中に誕生した「分散型台帳システム」です。「ブロック」と呼ばれる箱のようなものの中に取引データーを取り入れ、その「ブロック」の容量に空きがなくなる※1と、新しいブロックが作られます(これを『ブロックが生成される』と表現します)。ブロックが満たされるたびに次の新しいブロックができて、チェーンで繋いでいきます。この流れでできた技術を「ブロックチェーン」といいます。ちなみに、取引データは、トランザクションといいます。
※1 ビットコインの場合、データ容量は1MB

ユーザー全員が管理する「分散型台帳システム

ブロックチェーンは管理者が1人ではありません。特定の組織に情報が一極集中せず、利用するユーザー(ノード※2)同士がネット上で管理する非中央集権的システムです。つまり、国や銀行、大企業などといった組織が管理・運営していないので、勝手に情報が書き換えられることがないのです。
※2 ネットワークにつながっている通信端末(コンピュータ、スマホなど)のこと

ブロックチェーンは……
非中央集権的システム → 特定の存在が管理しないシステム → あちこちに分散しているノードが管理するシステム →「分散型台帳システム」

ブロックチェーンのブロックの中はどのような仕組みになっている?

ブロックチェーンの基本的な仕組みについてです。実際にはもっと複雑ですが、今回はメイン要素の「ナンス値」「過去のブロックにあるハッシュ値」「複数の取引データ」に絞って説明します。

ブロックチェーンの大まかなイメージ図です。イメージとしては電車や数珠でしょうか。ブロックチェーンの特徴の1つとして、ブロックが生成され、繋がるたびに1つ前の情報は過去のものになる点です。

ブロックチェーン画像2

新しいブロックがつながると、その1つ前のブロック内の情報は変えることができません。改ざんができないのです。仮に目の前のブロックや、これから繋げようとする新ブロックを改ざんすると、過去の全てのブロックや、後に続く未来のブロックの情報も永遠に変えなければならないということになります。不可能に等しい作業です。

ブロックチェーン画像4

新しいブロックを繋げるには、コンピューターを使って膨大な量の難解な計算をして正解を見つける必要があります。この膨大な量の難解な計算をする人たちのことを『マイナー』と呼び、そのマイナーの計算作業をマイニングと呼びます。このマイナーたちの仕事は誰よりも早く「ある条件を満たした新しいハッシュ値を見つけること」です。では「ある条件を満たした新しいハッシュ値を見つけること」とはどういうことでしょうか?下の図はブロックチェーンの中のイメージ図です。

ブロックチェーン画像3

「ナンス値」……新しいブロックを生成するときに作られる32ビットの数値
「過去のブロックにあるハッシュ値」……取引データを英数値に暗号化した値
「複数の取引データ」……取引データ(トランザクション)

順番に説明します。

① マイナーにブロックチェーンから問題が出ます。この問題からランダムな文字列が表示されているある数字が提供されます。この数字のことを『ナンス(number used one/一度だけ使用される使い捨ての数字)』といいます。マイナーはこのナンスを一度だけ使うことができます。

② この32ビットのナンス値を手元においたまま、次に、マイナーは1つ前の過去のブロックから『ハッシュ値』をゲットします。

③ 新しいブロックに記録される予定の指紋付値をとりだします。

ブロックチェーンの画像5

この①、②、③を「ハッシュ関数※3」に入れて256桁の値を得ます。これが新しいハッシュ値として、新ブロックに記録されるかもしれない候補の値となります。「候補」とは、まだこの段階ではマイニングが成立していないからです。成立するには、この256桁の前にたくさんの0をつけなければならず、膨大な計算を繰り返さなければなりません。最初に受け取った『ナンス値』を変えて繰り返し計算をします。
※3データから不規則なハッシュ値を生み出す関数のこと

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何度も計算をして、一番目にたくさんの0が並び、全体の数値もぴったりと合った『ナンス値』を見つけ出すことができたら、新しいブロックに投入することができます。

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そして、他のマイナー達からマイニングの正当性を認められると、晴れて新しいブロックを繋げることができます。ここで報酬(新コイン)もゲットできます。

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つまり、「ある条件を満たした新しいハッシュ値を見つけること」とは、「新しいハッシュ値の条件に合ったナンス値を最も早く見つけること」です。

同時にブロックが生成されたら?

マイニングは、あちこちのネットワーク上で行われています。そういった状況下ではほぼ同時に、新しいブロックが生成されてしまう場合も生じます。また、何らかの不正行為により改ざんされてしまったブロックが生成できてしまう可能性もあります。

ブロックチェーンではそのような場合の対応策として、「分岐したチェーンがでた場合、『長い方』を正しいブロックチェーンとして認める」というルールがあります。

長いブロックチェーン

かりに、一時的に分岐することがあっても、『長い方』のブロックチェーンを選ぶルールによって、同じ取引情報を共有できる仕組みになっています。

P2Pとは?

ブロックチェーンの「分散化台帳システム」は「P2Pネットワークシステム(以後P2Pと称します)」とも言います。ビットコインのホワイトペーパーにあるようにP2Pはビットコインの基盤となるシステムです。P2Pのネットワーク上でトランザクションが公開され、誰でも確認できるのもP2Pシステムがベースとなっているからです。ではP2Pとはどのようなシステムなのでしょうか?

Bitcoin:A Peer-to-Peer Electronic Cash System(ビットコイン:P2P電子マネーシステム)
https://bitcoin.org/bitcoin.pdf

まず「P2P」を説明する前に、その対照システムである「クライアントサーバー型ネットワークシステム」について説明します。

「クライアントサーバー型ネットワークシステム」

巨大なサーバー(コンピューター)が一括して情報やデータを管理し、必要に応じてクライアント(ユーザー)の通信端末(パソコンやスマホ等)に情報を提供するネットワークシステムです。ポイントはサーバー(サービスする側)とクライアント(サービスを受ける側)が別物という点です。

クライアントサーバー型システム

「クライアントサーバー型ネットワークシステム」の問題
サーバーは常時、情報やデータの管理をし、クライアントの要求に応えなければならないため、負担が大きいのが特徴です。処理が遅れたり、サービスの質が落ちたりすると、最悪の状況としてサーバーがダウンしてしまうこともあります(スケーラビリティ問題)。こういったサーバーの不具合を改善するため誕生したのが「P2P」です。

「P2P」

P2Pは、“peer-to-peer(ピア・ツー・ピア)”の略で、“peer”は「同じ立場にいるもの、同格のもの」、“to”は「~へ」の意味です。“peer-to-peer”は「同格の立場のもの同士のやりとり」で、同じ立場にあるユーザー同士が情報を提供したり、取引を直接に行ったりする方法のことです。IT用語で知られていましたが、ここ数年は、仮想通貨界隈で頻繁に使われるようになりました。

このシステムのポイントはサーバー(サービスする側)とクライアント(サービスを受ける側)が同一である点です。中央にサーバーのような管理者は存在せず、信頼関係をもったもの同士がお互いに情報やデータを提供したり、提供されたりする役割を担う、分散型ネットワークシステムであるということです。

「管理者のいない(トラストレス)な環境」をモットーとしているブロックチェーンがP2Pとコラボレーションするのは自然の成り行きであるといえます。

P2P型システム

P2Pは3つの世代ごとに分けられます。

第一世代 ハイブリットP2P

その名の通り、クライアントサーバー型とP2P型のハイブリット(混合)のシステムです。サーバーの役割を担う、データ検索用の「インデックスサーバー」とクライアントである通信端末の関係で成り立っています。「インデックスサーバー」はデータの所在情報を持っていて、その探索だけをします。通信端末は端末同士で「インデックスサーバー」から届いたデータのやり取りをします。

代表的なソフト:Napster、WinMXなど

第二世代 ピュアP2P

データ探索用の「インデックスサーバ」のない通信端末だけが存在するシステムです。データのやり取りはこの通信端末同士で行います。従来のP2Pのシステムにある通信端末同士のやり取りのみで支えられているシステムです。

代表的なソフト:Winny、Gnutellaなど

第三世代 スーパーノード型ハイブリットP2P

ハイブリットP2Pの特徴をもちつつ、「インデックスサーバー」のようなものが存在しません。その代わりに「スーパーノード」と呼ばれる、処理能力の高いリーダー的な存在の通信端末がデータの所在情報をもち探索します。データのやり取りは通信端末同士です。

代表的なソフト:Skype、KaZaAなど

P2Pのメリット

  • ゼロダウンシステムを実現
    「クライアントサーバー型ネットワークシステム」では、サーバーが停止してしまうと、システム全体が停止してしまいます。これを「ダウンタイム」と言います。ですが「P2P」ですと、管理しているユーザーが分散されているので、スケーラビリティ(拡張性)が高く、かりにどこかのユーザーがハッキングを受けたとしても、システム全体が停止することがありません。また、処理速度も速いです。これを「ゼロダウンタイム」といいます。
  • 高速な処理が可能
    ノード同士での直接データを取引するため、一旦、サーバーに預けてからダウンロードするといった余計な手順を踏む必要がながなく、素早い取引が可能です。
  • 低いコストで管理
    中央に管理者(サーバー)が存在しないため、通信回線費用などの手数料がかからない、あるいは安価ですみます。
  • 匿名性を確保しやすい
    データが分散されているため、情報の匿名性を確保しやすいです。

P2Pはデータの情報を分散化させて、各々のユーザーに管理されているので、個人のダメージが原因で、全体もダメになることはありません。外部の攻撃に強いとされています。ただデメリットも存在します。次はP2Pのデメリットについて見ていきます。

P2Pのデメリット 「ビザンチン将軍問題」

一見、「ビザンチンって?将軍って?と、P2Pやブロックチェーンと関係あるの?」と思うことでしょう。ですが、大いに関係があるのです。

「ビザンチン将軍問題」とは?

鎧甲冑フリー画像

「ビザンチン将軍問題」とはずばり、「合意形成問題」です。「ビザンチン」とは中世ヨーロッパ時代、地中海や黒海周辺を治めていたビザンチン帝国のことです。また「将軍」とは、このビザンチン帝国の都市、“コンスタンチノープル”を攻め落としたいオスマン帝国の9人の将軍のことで、この将軍達は“分散”して都市周辺を包囲していました。

都市を攻め落とすには、9人全員の一致した意見(全員攻撃か、全員撤退か……)、つまり、「全員の合意形成」が必要でした。ですが、離れているため、集結して話し合うことができません。そこで各軍から伝達者を出すことにしました。

ここで問題が生じます。

9人の将軍のうち、最後の1人が裏切り者だったのです。8つの部隊のうち4部隊には「攻撃」を、他の4部隊には「撤退」の情報を流したのです。各々の部隊はその情報を信じるしかなく、結局、陥都市を攻め落とすことができませんでした。つまり、「合意形成ができなかった」のです。

これを「ビザンチン将軍問題」または「ビザンチン障害」といいます。

つまり、「ビザンチン将軍問題」は、

意見の一致がなされなければならない事態において、なんらかの事情で意思疎通の困難、あるいは故意に偽りの情報が流れる可能性に陥った状態=「合意形成問題」なのです。

そして、このP2Pの「分散型システムにおける合意形成問題」を解消するために組み込まれたシステムが、ブロックチェーンの中にあります。

新しいブロックの生成を承認するシステム コンセンサスアルゴリズム

なんども言いますが、ブロックチェーンは中央に管理者が存在しないので、取引の際、誰(何)かしらが、その取引をチェックする必要があります。このチェックをコンセンサスアルゴリズム(consensus algorithm/合意形成アルゴリズム)というシステムを用いて行うことになりました。このシステムには、規模によって各々適したルールがありました。代表的なルールが以下の6種類です。簡単に説明します。

PoW(Proof of Work/プルーフ・オブ・ワーク)

コンセンサスアルゴリズムの中で一番目に誕生したルールです。膨大な量の計算をして、一番速く正解を出した人に、次ブロックの生成をする資格と新コインの報酬をあげるシステムです。つまり、最も優位に立っているのが「よく働いた人」です。
【PoWのメリット】データの改ざんに強い
【PoWのデメリット】電力の消費量がかかりすぎる、51%攻撃※4に弱い
【PoWを採用している通貨】ビットコイン、ビットコインキャッシュ 、ライトコインなど

PoS(Proof of Stake/プルーフ・オブ・ステーク)

PoWの51%攻撃や膨大な電力消費の問題を解決するために開発されたシステムです。コインの保有量や保有年数が最も多い人が、次ブロックの生成者を決める権利があります。つまり、最も優位に立っているのが「最も多くのコインを持っている人」です。
【PoSのメリット】51%攻撃を改善
【PoSのデメリット】経済的に不平等(富裕層に優位な点)
【PoSを採用している通貨】イーサリアム、エイダコイン、エックスピー

(Proof of Importance/プルーフ・オブ・インポータンス)

そのまま訳すと、「重要度の承認」で、重要度が高い通貨を保有している人が承認を行うシステムです。この重要度とは①取引回数②取引量などから総合的に判断されます。つまり、最も優位に立っているのが「上手く取引回数や取引量をした人」です。
【PoIのメリット】流動性の向上
【PoIのデメリット】不完全な経済的な平等
【PoIを採用している通貨】ネム

PoC(Proof of Consensus/プルーフ・オブ・コンセンサス)

認められた企業や機関だけがブロックの生成の承認者を決めるシステムです。このシステムは特定の人たちによって決められるので、中央集権的だと言われていることもありますが、信頼性の高い企業や組織が採用するのは問題がないとも言われています。
【PoCのメリット】承認スピードが速い
【PoCのデメリット】中央集権的
【PoCを採用している通貨】リップル

DPoS(Delegated Proof of Stake/デリゲート・プルーフ・オブ・ステーク)

PoSの進化系で、コインの保有量によって投票者を決め、その最大保有者によって選ばれた人が承認を行うルールのことです。いわゆる選挙で承認する者を決める民主的なシステムです。
【DPoSのメリット】民主主義的側面がある
【DPoSのデメリット】中央集権的になる恐れ
【DPoSを採用している通貨】イオス、リスク

PoB(Proof of Burn/プルーフ・オブ・バーン)

PoWやPoSの欠点を克服するために開発されたシステムです。他のコンセンサスアルゴリズムによる通常のマイニングの報酬が「コインベース」と呼ばれる特殊なインプットを持つ取引記録を使って通貨発行をしているのに対し、秘密鍵がわからない使用不可能なアウトプットを持つ取引記録を送金(Burn/焼却)することで、同額の価値を持つ新コインを得ることができるという仕組みです。つまり、新コインを得るために、その分の古いコインを燃やす手段です。ビットコインを発行するマイニングとは逆の手順です。
【PoBを採用している通貨】カウンターパーティ

※4 計算に参加している人(ノード)の中で、不正をしようとしている人が全体の50%を超えるとトランザクションの改ざんができてしまうこと。というのもPoWは膨大量の難解な計算をして正解を出した人が優位に立たせられるので、自動的に、計算力のある人が選ばれてしまうという欠点があるからだ。

ブロックチェーンの種類

ブロックチェーンは大きく3つの型に分けられます。

    1. 「パブリック型」……

 

    1. ブロックチェーンの根幹理念を持っているシステムと言えます。管理者が存在せず、誰でもネットワークに参加でき、トランザクションの承認ができます。ビットコインはこの型を採用しています。

「プライベート型」……
管理者や参加者が存在します。管理者は単一の組織やグループに限定され、参加者は管理者の許可を得なければなりません。

「コンソーシアム型」……
管理者や参加者が存在します。管理者は複数の団体・組織で、参加者は管理者の許可を得なければなりません。

仮想通貨以外に採用されているブロックチェーン

仮想通貨以外にもブロックチェーンはおおいに活用されています。dAppsゲームデジタルコンテンツはそのうちの1つです。

  • dAppsゲーム
    dApps(ダップス)は、分散画型アプリケーション(decentralized Applications)の略で、いわゆる、ブロックチェーン技術を用いたゲームです。オープンソースで、中央には管理者が存在しません。アプリ内のデーターは安全で整合がしっかりとしています。また、ほとんどのdAppsゲームはイーサリアムのプラットフォーム上で開発されていて、ゲーム内の通貨(トークン)を用いてプレーします。参加者はそのトークンによって報酬が支払われます。以下が主なdAppsゲームです。

クリプトキティーズ(Cryptokitties)
2017年11月にリリースされたdAppsゲームの先駆けといえるゲームです。自分のお気に入りの猫を育成したり、交配させてレアな猫を生んで、売買することが目的です。

イーサエモン(Etheremon)
イーサエモンと呼ばれるモンスターを集めて育成させるゲームです。他のプレーヤーとイーサエモンを使ったバトルが魅力です。

マイクリプトヒーローズ(My Crypto Heroes)
歴史上の偉人を強化・収集してバトルを行う国産のRPGです。とてもクオリティーが高く、プレセールの段階で話題になり、開始後24時間の取引量がdAppsゲームで世界一になりました。

くりぷ豚(くりぷトン)
「くりぷトン」と呼ばれる豚を交配させて新しい豚を生み出すゲームです。生まれた豚同士でお見合いさせることができます。

  • デジタルコンテンツ
    画像や文章、音楽などの作品をデータ化して消費者に提供されているもののことです。インターネットを通じてデータでやり取りできるので、誰でも自由に発信できる時代になりました。ですが、そのやり方にもデメリットが生じます。著作権に関する問題です。自由であるがゆえに「誰が著作権を持っているか」を把握するのが困難なのです。

その問題を解決するのが情報改ざんや管理に強い技術のブロックチェーンと言われています。

その他、将来において活躍が期待されるブロックチェーン技術の応用例

トレーサビリティ・システム

トレーサビリティとは、トレース(=trace/追跡)+ アビリティ(=ability/能力)で、「追跡の能力がある」という意味です。農業、食品、流通、製造、医療などの製品の原材料や生産過程に関する情報を追跡し、明確にすることで偽造のない安心・安全な製品を提供するといったオープンソースなシステムのことをいいます。まさに「取引記録を改ざんすることができない」ブロックチェーンの特徴を活かしているといえます。

トレーサビリティ・システムを用いた例:

  • 食品……ワイン生産会社はワインの栽培から製造、流通までの履歴をブロックチェーンに記録し、消費者はワインボトルに貼られたQRコードにスマートフォンをかざすことで、日付や製造工程の写真、生産者情報などを確認できます。
  • 自動車産業……別々のレンタカー会社どうし空レンタカーの情報を共有し、必要に応じて調達することができます。また、他レンタカー会社から車を借りたことで、スマートコントラクトによるアフィリエイト(照会料)の支払いまで行えることができるようになります。
  • 不動産……マンションの管理組合の運営は、年次報告書のみが公開される場合が多く、マンション管理会社や業務実施業者、管理会社や組合理事などのやりとりが見えにくいです。そこでブロックチェーンを用いることで、実施業者、管理会社、組合理事、組合員などのデータを共有し、追跡することができるようになります。管理業務に関する様々な報告や支払いの透明性もアピールできます。

その他に、保険、医療、教育、公務員、慈善活動、投資、国際貿易、オンラインショッピングなどにもトレーサビリティの活用が期待されています。

まとめ

ブロックチェーンまとめ画像

ブロックチェーンのメリット

  • 中央集権化を防ぎます…国や銀行のような特定の管理機関がないため、一元的な管理システムになることがありません。
  • ゼロダウンタイムができる…ブロックチェーンの基盤であるP2Pでは、管理しているノードが分散されているので、かりにどこかのノードがハッキングを受けたとしても、システム全体が停止することがありません。
  • データーの改ざんを防ぐ…一部のノードが記録の改ざんをしても全ての記録を改ざんすることは難しく、データの復旧も可能です。
  • コストが安い…中央に管理者を配置するクライアントサーバーに比べ、分散型システムのP2Pは管理費用が安く済みます。

ブロックチェーンのデメリット

  • 処理速度が遅い…ビットコインの場合、1ブロックの最大容量は1MB。その中にある取引データを処理できるのは1秒に平均6~7件だけです。ちなみにVISAカードは1秒で最大56,000件以上処理できます。
  • アップグレードが難しい…分散化されて管理されているということは、「システムをアップグレードがすることが困難」であるともいえます。
  • 手数料が高い取引を優先的に記録される…マイナーたちは報酬を目当てにしてマイニングをしているので、取引の手数料の中でも高いものをねらってしまいがちです。
  • 管理している者の正誤を判断できない。
    管理しているものの「改ざん」はわかりますが、その管理しているものの「正誤の有無」は判断できません。もし、最初から間違ったものをブロックチェーンで管理してしまったとすれば、それは、ずっと間違ったままということになります。

ほんの少し前までは、「ブロックチェーン」という名前すら皆無でしたが、2017年末の仮想通貨バブルに牽引されるかのようにブロックチェーンも一躍有名になりました。これまでにない徹底した情報管理と改ざんの難しい決済・送金システムを装備したその技術は、ひとくくりでまとめるのがもったいないほど、革新的な要素をたくさん盛り込んでいるといえます。近い将来、私たちの生活に必要不可欠な技術であることは間違いありません。

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