仮想通貨イーサリアム(Ethereum)

イーサリアム(Ethereum)は、ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏により考案されたブロックチェーンプラットフォームの名称です。仮想通貨取引所などで、イーサリアムとして取引がなされているのは、このイーサリアム上で利用されているトークンであるイーサ(Ether)となります。また、仮想通貨全体においては、時価総額2位であることも有名です。

イーサリアムとブロックチェーン技術

現在、ブロックチェーン技術を利用した様々なプロジェクトが誕生しています。

その中で、イーサリアムは「分散型アプリケーション(Dapps)を開発・実行させるためのプラットフォーム」として誕生しました。

プラットフォームとは
プラットフォームとは、「基盤となる環境」を意味します。何かアプリケーションを開発する場合、「開発する環境」がなければ、ゼロからすべて準備しなければなりません。しかし、「開発者全員が共通して準備する部分」というものは存在しています。
例えば、仮想通貨を新たに開発しようとする場合には、ブロックチェーン技術を活用するための準備は開発者全員が行うことでしょう。(開発者全員が行うのであれば)それらを一度準備して、誰でもつかえるようなカタチで提供することができれば、あとは開発者がその「環境」を利用して独自のアプリケーションを開発することができます。
イーサリアムはブロックチェーン・プラットフォームとも呼ばれます。これは、「ブロックチェーン技術を利用したアプリケーションの開発ができる環境」と言い換えると分かりやすいかもしれません。

分散型アプリケーション(Dapps)開発/実行プラットフォーム

分散型アプリケーション(Dapps)とは、ブロックチェーン技術を用いて運営されるアプリケーションのことです。「分散型 = 不特定多数のコンピューター」によってその機能が成立しています。

イーサリアムは、この「分散型アプリケーション」を誰でも開発・実行できるようなプラットフォームを提供することを目的としています。

分散型自立組織(DAO)構築/運営プラットフォーム
分散型自立組織(DAO)とは、ブロックチェーン技術を用いて運営される組織のことです。「分散型 = 不特定多数のユーザー」によってその組織が成立しています。
※分散型アプリケーションと同義の言葉として用いられる場合が多く、その区別が厳密になされているわけではありません。

スマートコントラクト実装・実行プラットフォーム

スマートコントラクトとは、「取引に対する条件やルールをプログラム言語で記述し、その条件を満たした場合はルールに沿って自動的に取引が実行される」という概念です。

スマートコントラクトのイメージ
「スマートコントラクト」という概念は、ブロックチェーン技術が生まれる前から存在していました。よく、簡単な例として、「自動販売機」が挙げられます。自動販売機で飲み物を購入する際には、
①お金を入れる
②ボタンを押して飲み物を選択する
③飲み物がでてくる
④おつりを受け取る
という一連の流れがありますが、「購入者の行動に対する判断・応答」はすべてプログラムで自動的に実行されています。
「取引に対する条件やルールなどがプログラムによって判断され、自動的に実行されている」ため「自動販売機での取引」はスマートコントラクトの概念に当てはまっています。

イーサリアムでは、スマートコントラクトを実装させる機能が備わっています。
つまり、イーサリアム上の分散型アプリケーション及びDAOの中で発生する様々な取引の需要に対し、スマートコントラクトを利用することによって自動的に取引を実行することが可能となります。

Dapps及びDAOの基盤となっているのはブロックチェーン技術であるため、スマートコントラクトにより実行された取引記録は、その契約内容も含め、ブロックチェーン上に記録されることとなります。
これは、「契約~取引実行までの一連の流れの透明性が確保される」ことを意味しています。

従来では、「需要者と供給者の間に信頼がある」または「需要者と供給者をつなぐ仲介者に信頼がある」状況が契約・取引の前提条件となっていました。

ここでの信頼とは、「契約内容が改ざんされない」ことや「取引が正しく履行される」ことへの信用を意味しています。

スマートコントラクトをブロックチェーン上で利用することで、「特定の管理者・仲介者が存在しないアプリケーション・組織の中においても、透明性のある取引を実現させる」ことが期待されています。

 

イーサ(Ether)とERCトークン

イーサリアムは、Dapps開発/実行プラットフォームであり、スマートコントラクト実装・実行プラットフォームでもあります。

イーサリアムでは、プラットフォーム上に存在するDappsを機能させる上で2種類のトークンが利用されています。

「イーサ(Ether)」と「ERCトークン」です。
※トークンとは、ブロックチェーン上において「決済機能」の役割を果たすものです。代替通貨とも呼ばれています。

イーサ(Ether)
イーサリアム上で稼働しているDapps内で発生する取引は、イーサリアム・プラットフォーム支持者によってブロックチェーンに記録・保持される仕組みとなっています。
イーサ(Ether)は、Dapps利用者が、イーサリアム・プラットフォーム支持者に対して支払う手数料(Gasと呼ばれる)として利用されています。

ERCトークン
ERCトークンはDapps内の取引において利用されています。
一般的には、イーサリアム・プラットフォーム上で開発されたアプリケーションや同プラットフォーム上で構築された組織ごとに発行されており、仮想通貨取引所などに流通しているものも存在します。

ERCとは
ERCとは、トークン作成の規格を指しています。
仮想通貨及びトークンはウォレットで管理されますが、「仮想通貨・トークンの作り方」によって、必要となるウォレットの構造も異なります。トークン作成にあたり規格を設ければ、利用できるウォレット構造も明確になり、一つのウォレットで複数のトークンを保管できるようになるため、イーサリアムではERCという規格を設け、このようなウォレットの煩雑化に対する対処がなされています。
ERCトークンは、ERC規格に基づき作成されたトークンの総称であり、トークン発行者が独自に考えた名称が利用されることが一般的です。

一般的に、仮想通貨取引所などでイーサリアム(ETH)と呼ばれているのは、イーサ(Ether)のことです。

イーサリアム上のDapps内の取引において利用されるERCトークンは、そのプロジェクト固有の名称がつけられ、仮想通貨取引所などで流通されています。

つまり、「イーサリアム」というトークン(仮想通貨)とはまた別のものであるということです。

例としては、以下のようなものが挙げられます。

Auger

Binance Coin

OmiseGo

 

イーサリアムのロードマップ

イーサリアムでは、コンセンサスアルゴリズムPoWからPoSへと移行させるために、段階的なアップデートを行うことが発表されています。

第一段階:Frontier(フロンティア)
第二段階:ホームステッド(Homestead)
第三段階:メトロポリス(Metropolis)
第四段階:セレニティ(Serenity)

また、イーサリアムでは、PoSのスムーズな移行へ向けて、ディフィカルティボム(Difficulty Bomb)というアルゴリズムが採用されています。

ディフィカルティボム(Difficulty Bomb)
ディフィカルティボム(Difficulty Bomb)とは、古いブロックチェーン上でのマイニング難易度を上昇させるという仕組みです。
コンセンサスアルゴリズムの移行は、仕様の大幅な変更が必要不可欠となり、ハードフォークを実施する必要があります。その際、古いブロックチェーンにマイナーが残ってしまうと「ブロックチェーンが分岐されてしまう = 仮想通貨が分裂してしまう」という結果となります。
このような状況を未然に防ぐ対策として、イーサリアムでは、次段階のアップグレードへ向けて、事前にディフィカルティボム(Difficulty Bomb)が組み込まれています。

時系列でみるイーサリアム

2013年

ホワイトペーパーの発表
ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏によりイーサリアムが考案され、そのホワイトペーパーが公開されました。

2014年

7月

ICOの実施
イーサリアムのICOが実施され、初めてイーサ(ETH)が世の中に流布されることになります。イーサリアムのICO実施時の価格は約0.3ドル程度でした。

2015年

7月

フロンティア(Frontier)のリリース
予定されている4段階のアップデートの内、1段階目となるアップデートが実行され、新たなバージョンとなるFrontier(フロンティア)がリリースされました。
Frontier(フロンティア)は、実験段階のプラットフォームつまりテスト版として認識がなされています。

2016年

3月

ホームステッド(Homestead)のリリース
予定されている4段階のアップデートの内、2段階目となるアップデートが実行され、新たなバージョンとなるホームステッド(Homestead)がリリースされました。
また、同月のイーサリアムの価格は約6ドル~15ドルの間で推移しており、価格推移は上昇傾向を見せていました。

5月

The DaoがICOを実施
「The Dao」とは、ドイツ企業Slock itにより発表されたプロジェクトです。
イーサリアム上に分散型自立組織(DAO)を構築して「自律分散型の投資ファンド」を実現させようとするものです。
The Daoは、このICOにより巨額の資金調達に成功し、大きな注目を集めました。
同月のイーサリアムの価格は約6ドル~15ドルの間で推移しており、価格推移は上昇傾向を見せていました。

※The Dao はプロジェクトの名称であり、分散型自立組織を意味する「DAO」とは別のものです。

6月

The Dao事件の発生
The Daoのプログラムコードの脆弱性が要因となり、The Daoがイーサリアム上に保管していた資金(ETH)が流出する事件が発生しました。
流出金額は約3,600,000 ETHほどとされており、巨額の資金流出事件として、大きな注目を集めました。
また、同月のイーサリアムの価格は一時約20ドルの高値をつけましたが、The Dao事件が発生した17日から翌日18日にかけて、その価格は約50%の下落を見せました。

7月

ハードフォークによりイーサリアムクラシック(ETC)が誕生
The Dao事件による資金流出の対応策としてイーサリアムのハードフォークが実施され、ブロックチェーンが分岐することとなり、イーサリアムクラシック(ETC)が誕生しました。
また、同月のイーサリアムの価格は約10ドル~15ドルの間で推移し、価格推移は横ばいとなっていました。

※このハードフォーク(アップデート)は、当初から計画されていた4段階のアップデートとは無関係なものです。

2017年

10月

ビザンティウム(Byzantium)のリリース
予定されている4段階のアップデートの内、3段階目となるアップデートは2回に分けて実行されることとなりました。その内の1回目となるアップデートが実行され、新たなバージョンとなるビザンティウム(Byzantium)がリリースされました。
ビザンティウム(Byzantium)では、「ディフィカルティボム(Difficulty Bomb)の延期」が示唆される一方で、PoSへの移行へ向けて「マイニング報酬の減額」などの変更がなされました。
また、年初10ドル前で取引がなされていたイーサリアムの価格は、同月には約280ドル~350ドルの間で推移しており、約300倍以上もの価格高騰を見せていました。

2018年

10月

開発チームがアップデートの延期を発表
イーサリアム開発チームにより、同年11月に予定されていた次段階の計画的なアップグレードが延期されることが決定されました「。アップグレードに向けたテスト中にバグが発見された」ことが理由として挙げられていました。
また、同月のイーサリアムの価格は約230ドル~200ドルの間で推移し、価格推移は下落傾向を見せていました。

2019年

1月

開発チームがアップデートの再度延期を発表
イーサリアム開発チームにより、同月16日に予定されていた次段階の計画的なアップグレードが再度延期となる旨が発表されました。
「資金流出につながる脆弱性をセキュリティ企業が発見した」ことが理由として挙げられていました。
また、同月のイーサリアムの価格は約160ドル~108ドルの間で推移し、月初には価格上昇傾向を見せていたものの、価格はそれ以降に下落を続け、約40%の下落を見せました。

3月

コンスタンティノープル(Constantinople)のリリース
3段階目となるアップデートの内2回目となるアップデートが実行され、新たなバージョンとなるコンスタンティノープル(Constantinople)がリリースされました。
コンセンサスアルゴリズムのPoSへの移行を視野に入れた、「取引処理効率の改善」や「さらなるマイニング報酬の減額」などの変更がなされました。
また、同月のイーサリアムの価格は約126ドル~143ドルの間で推移しており、価格推移は横ばいとなっていました。

イーサリアムの今後

現在、イーサリアムは3段階目のアップデートである「メトロポリス(Metropolis)」が終了しています。

計画的アップデートの最終段階のであるセレニティ(Serenity)では、コンセンサスアルゴリズムのPoWからPoSへの完全移行が計画されています。また、スケーラビリティ問題に対する解決策としてSharding呼ばれる新たな技術も実装される予定となっています。

しかし、セレニティ(Serenity)へのアップデートについては、具体的な日程はまだ公表されておらず、公式アナウンスを待つ状態となっています。

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